粘葉本和漢朗詠集(平安)


〈読み〉
千年(ちとせ)までちぎりし松も今日(けふ)よりは君に引かれて万代(よろづよ)や経(へ)む 能宜

〈歌意〉
千年まで寿命を保つと約束された松も、今日からは(万年の長寿を持つ)君に引かれたので、万年を経て生き続けるであろうよ

 「和漢朗詠集」は平安時代歌人で、藤原公任が、漢詩、漢文、和歌を集めた朗詠のための詩文集(ソングブック)です。長和2年(1013年)頃に成立しました。もともとは藤原道長の娘威子入内の際の引き出物の屏風絵に添える歌として撰集され、のちに公任の娘が藤原教道と婚姻を結ぶ際の引き出物として、朗詠に適した和漢の詩文を、藤原行成が清書し、それを冊子として装幀されたものといわれています。行成の親筆かどうか定かではありませんが、平安朝の仮名の中で、もっとも典雅な作品であることは否めません。