屏風土代(平安•延長6年928•小野道風)枕上心閑

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屏風土代(平安•延長6年928•小野道風) 『枕上心閑』

 小野道風と聞いて直ぐに思い浮かぶ逸話は、花札の絵柄にもなった(花札の柄で唯一の人間)『柳に蛙が飛びつこうと、繰り返している様を見て、書も諦めず精進することを学んだ』というものです。忠実であるかどうかは甚だ疑問ですが、江戸中期1754年に初演された『小野道風青柳硯』という浄瑠璃からだそうです。戦前の国定教科書にも載せられて、広く努力の大切さを学ばせる話に使われました。
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 実像の小野道風はどうだったのでしょうか。経歴をまとめてみました。

小野道風】 おののみちかぜ

(寛平8〜康保3 • 896〜966年)

祖父...小野皇 父...小野葛絃 母...不明

 右兵衛少尉、少内記、内蔵権助、右衛門佐宇佐使、木工頭を経て、最終的には正四位下内蔵権頭となる。これらの昇進は、書の功績によるもので、書で奉職した稀有な存在だったと言えるでしょう。

•天徳3年8月の闘詩行事略記に
小野道風は能書の絶妙なり」
源氏物語
「今めかしうをかしげ」
などと記され、能書としての名声は存命中から大変高かったのですが、没後はその評価がますます高まりました。
 
 屏風土代以外の現存する真跡は
1.三体白氏詩巻(国宝) 正木美術館
2.智征大師諡号勅書(国宝) 東京国立博物館
3.玉泉帖 三の丸尚蔵館
4.絹地切 東京国立博物館 

です。これらの比較をすることで何かが見えてくるかもしれません。

 最後に鎌倉時代と江戸時代に描かれた道風の肖像画を紹介します。どの程度写実性があるかは判りませんが、白の表袴、黒い袍、石帯、纓を垂らした冠の姿で描かれています。没後、道風は「書の神」として崇拝され、その肖像が描かれるようになったそうです。ただ、花札の貴公子とは随分ギャップがあって、戸惑ってしまいますね(笑)。

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小野道風像 伝来寿筆 (鎌倉時代

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小野道風 鈴木春信画 (江戸時代)